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2021年12月2日(木)

新潟建築散歩 谷村美術館

普段のこちらのブログの内容から話題が逸れてしまいますが、たまには息抜きに…ということで今回は訪れて楽しい新潟の建築をご紹介したいと思います。

今日ご紹介するのは糸魚川市にある谷村美術館。

彫刻家 澤田政廣の仏像彫刻を展示するために計画された小さな美術館で、村野藤吾によって設計され、1983年に完成を迎えました。

シルクロードの砂漠に建つ石窟をイメージして作られたというこの美術館。まさにそのイメージの通り、砂敷きの庭から石の塊が立ち上がっているような外観にまず目を奪われます。

完成から40年近くの月日が経ち、黒みがかってきた外壁の色合いもその雰囲気を表しているように感じます。

受付を通り木の回廊を展示室へ向かって進んでいくと、ざらざらとした表面の外壁に目が留まります。地面に接する部分は曲線で仕上げられていて、細かな意匠まで「砂漠の石窟」のイメージで統一されていることを感じます。

屋内は撮影不可のため写真でお伝えすることができませんが、内部もすべての辺がRで繋がり合い、有機的な形がとても印象的な空間となっていました。

円形のような間取りの小さな展示室が中央の廊下を介して連続し、それぞれの室に一体、または数体の仏像が展示されています。

壁の少し奥まったところにスリットのように設けられた細い窓や、所々にある天窓から静かな光が差し込んで、建物の中に様々な陰影ができ、小さな建物の中で何度もはっとするような瞬間がありました。

庭と建物のつながりや光の変化、素材の質感などを感じながら、インターネットでどんな情報も手に入るような気がしてしまう現在ですが、実際にその場に行くことでしか触れられない感覚が確かにあるとあらためて思い出していました。

美術館の隣には玉翠園という庭園があり、こちらも背景の山を借景とした見事なお庭です。

糸魚川というと同じ新潟県内でも見附や長岡からはやや距離がありますが…もし機会があれば訪れてみてください。

谷村美術館を設計した村野藤吾は、1891年(明治24年)に生まれ、1929年(昭和4年)に自身の事務所を設立、日本の建築が近代化してゆく時代に多くの功績を遺した建築家の一人です。1984年(昭和59年)、93歳で世を去る間際まで設計の仕事に就いたと言われています。

調べてみると近年にも作品を網羅的に掲載した本が出版されており、こちらでは建物内部の写真もいくつか見ることができました。ご興味のある方はぜひ覗いてみてください!

▶書籍『村野藤吾建築案内』

▶谷村美術館WEBサイト

/hasegawa